2 機械のカテゴリーによる規制
報告書で興味深かったのが、安衛法令の規制によって、機械分類が整理されたことです。この分類は、A 特定機械(ボイラー・クレーン等)、B 検定対象機械等(小型ボイラー等)、C 自己認証対象機械等(Bを除く構造規格を具備した機械)、D-1動力により駆動される機械等(作動部に突起を有する等)、D-2 D-1以外で安衛則の規制がある機械等、E 未規制機械等の6種類です。このうち法令を根拠とした命令制度の対象とならないのは、D-1、D-2、Eの機械です。なお、Aの機械は全数を製造時検査に実施しているので、本制度の対象とする必要がありません。
3 命令制度の対象外であるEの機械「小型昇降機」の事例
(1)災害発生状況
飲食店における料理等の運搬のために設置した小型昇降機の内部を清掃中の被災者が、急に上昇したかごにはさまれ死亡しました。
(2)推定原因
戸の開閉を検知するドアスイッチが昇降路内で露出しており、戸以外の何かが当たった際に、戸が開いたままでも起動しました。
(3)対応状況
災害の発生原因として、機械の欠陥が考えられますが、行政指導による回収・改善の要請はされておらず、水平展開が課題です。
4 危険な機械の回収・改善を促進させるための方策のあり方
(1)有効な方法は公表であり、情報の周知である。
(2)流通業者への協力依頼とその積み重ねによる安全意識の向上。
(3)JIS・機械包括安全指針等の普及促進、災害情報の共有化、人材育成など。
5 報告書を受けての労働政策審議会労働安全衛生分科会の方針
(議事録http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000033468.htmlを一部引用)
(1)「欠陥機械等の回収・改善方策」は、報告書の中では、欠陥のある機械等の回収・改善命令又は要請の範囲のあり方について、 D-1 の機械等について行政指導により十分に回収・改善が進んでいない事例は、流通の過程でのエンドユーザーが把握できない場合がほとんどである。法令上の命令制度としても実効性は少ないと考えられることから、回収・改善命令の範囲に加えることは慎重に考えるということが検討結果であり、引き続き行政指導により、回収・改善を促進する。
(2)回収・改善を促進するために、必要がある場合は公表するよう行政指導するとともに、必要に応じて国が公表に協力する等の取組を行い、今後の対策の進捗状況を踏まえ、引き続き検討する。
(3)結び:以上の結果、新たな法規制は見送り、従前の法令措置と行政指導の拡充により、回収・改善を促進することとなった模様です。